緑内障でしてはいけないこと。本当に気をつけるべき習慣と治療の話

緑内障と診断された方が日常で気をつけるべきことは、実は多くはありません。この記事では、医学的根拠を踏まえて「本当に注意すべきこと」だけを整理し、根拠の弱い「してはいけない」情報と切り分けてお伝えします。

緑内障と診断されても日常生活は大きく変わらない

緑内障と診断されても日常生活は大きく変わらない

「緑内障になったらしてはいけないことがたくさんあるのでは」と構えている方は少なくないと思いますが、実際にはそうではありません。

目を使うこと自体は緑内障を悪化させない

読書、パソコン作業、テレビ、スマートフォンの使用など、目を使う行為そのものが緑内障を進行させることはありません。目を酷使すると視力が落ちるのではないかと心配して趣味や仕事を制限してしまう方がいますが、その必要はありません。

参考:緑内障といわれた方へ―日常生活と心構え―公益社団法人日本眼科医会

緑内障で本当に避けるべきことは限られている

緑内障で気をつけるべきことは、大きく分けると3つに絞られます。

  • 眼圧を上げやすい特定の姿勢を長時間続けること
  • 緑内障のタイプによって使えない薬があること
  • 点眼治療や定期検査を自己判断でやめてしまうこと

この3つさえ押さえておけば、旅行も運動も食事も、基本的にこれまで通りの生活を送れます。以下のセクションでそれぞれ具体的に説明します。

緑内障で避けたほうがよい姿勢と動作

緑内障で避けたほうがよい姿勢と動作

眼圧は体の姿勢や動作によって変動します。健康な方であれば問題にならない程度の変動でも、緑内障の方には影響が出る場合があります。

うつぶせ寝は眼球を直接圧迫する

うつぶせで寝ると、枕や腕で眼球が直接圧迫され、眼圧が上がります。仰向けでも座っている時より眼圧はやや上がりますが、うつぶせの場合はその差がさらに大きくなります。カナダ・トロント大学の研究では、緑内障患者17名を対象に上半身を約30度起こして寝てもらったところ、17名中16名(約94%)で眼圧の低下が確認されました。

枕を高くしすぎると首に負担がかかるため、上半身全体を緩やかに起こす傾斜を意識するとよいでしょう。

参考:Effect of sleeping in a head-up position on intraocular pressure in patients with glaucoma|PubMed

長時間のうつむき姿勢に注意する

デスクワークや読書、スマートフォンの操作など、頭を下げた姿勢を長時間続けると、頭部に血液が集まりやすくなり、眼圧が上がる方向に作用します。目を使うこと自体は問題ありませんが、長時間うつむいた姿勢を続けることが眼圧に影響するため、30分〜1時間に一度は顔を上げて、遠くを見るなど姿勢を変える休憩を挟むのがよいでしょう。ヨガの逆立ちのポーズや、頭が心臓より低くなる体勢も同様の理由で避けたほうが安心です。

首を強く締めつける服装にも配慮する

きついネクタイや襟元が詰まった服は、頸静脈(首の太い静脈)を圧迫し、頭部の血液が心臓に戻りにくくなることで眼圧を上げる可能性があります。2003年の研究では、きつくネクタイを締めて3分後の眼圧が、緑内障患者で平均1.0mmHg、健常者で平均2.6mmHg上昇したことが報告されています。日常的にネクタイを締める方は、指1本分の余裕を持たせることを意識してください。

参考:Effect of a tight necktie on intraocular pressure|PubMed

緑内障の治療中に注意が必要な薬

緑内障の治療中に注意が必要な薬

緑内障の方が薬を使うときに最も注意したいのは、抗コリン作用を持つ薬です。ただし、すべての緑内障で同じように注意が必要なわけではありません。

閉塞隅角緑内障では抗コリン薬が禁忌になる

抗コリン薬は、瞳孔を広げる作用(散瞳)を持っています。閉塞隅角緑内障の方がこの薬を使うと、広がった虹彩が房水の排出口(隅角)をふさいでしまい、眼圧が急激に上がる「急性発作」を起こすおそれがあります。

令和元年の厚生労働省通知では、抗コリン作用を持つ薬の添付文書が改訂され、禁忌の対象が「緑内障」から「閉塞隅角緑内障」に限定されました。開放隅角緑内障の方は禁忌ではなく「慎重投与」に変更されています。

抗コリン作用を持つ薬は、風邪薬、胃腸薬、抗アレルギー薬、抗うつ薬、頻尿治療薬など日常的に使われる薬に幅広く含まれています。自分の緑内障が「開放隅角」なのか「閉塞隅角」なのかを把握しておくことが重要です。

参考:「抗コリン作用」を有する薬剤における禁忌「緑内障」等に係る添付文書の「使用上の注意」改訂について(薬生安発0618第2号)|PMDA

ステロイド薬は投与経路でリスクが変わる

ステロイド薬は眼圧を上げる可能性がありますが、リスクは投与経路で大きく異なります。最も影響が出やすいのはステロイド点眼薬で、眼科以外で処方されることもあるため注意が必要です。長期の内服ステロイドや、顔・まぶた周囲への長期外用も中程度のリスクがあります。

一方、吸入ステロイド(喘息治療など)や体幹・手足への外用ステロイドは眼圧への影響が小さいとされています。

リスクの大小にかかわらず、緑内障で通院中であることを他科の処方医に必ず伝えてください。診療科をまたいだ情報共有が、不要な眼圧上昇を防ぐ最大のポイントです。

参考:緑内障診療ガイドライン(第5版)|日本眼科学会

他科を受診するときは「緑内障連絡カード」が役立つ

日本眼科医会では「緑内障連絡カード」を発行しています。自分の緑内障のタイプ(開放隅角か閉塞隅角か)や使用中の点眼薬が記載されたカードで、眼科以外の医師・薬剤師に見せることで、使えない薬を誤って処方されるリスクを減らせます。

かかりつけの眼科で発行してもらえますので、お持ちでない方は次回の受診時にご相談ください。

緑内障の進行を防ぐために続けてほしいこと

緑内障の進行を防ぐために続けてほしいこと

緑内障の管理で最も大切なのは、「してはいけないこと」を避けることよりも、「続けるべきこと」を途切れさせないことです。

点眼治療を自己判断で中断しない

緑内障の点眼薬は、眼圧を下げて視神経へのダメージの進行を抑えるために使います。一度失われた視野は元に戻らないため、治療の目標は「今の見え方をできるだけ長く保つこと」です。自覚症状がないまま経過することが多いため、「もう大丈夫かな」と自己判断で点眼をやめてしまう方がいますが、点眼を中断すると眼圧が再び上昇し、気づかないうちに視野の欠損が進むおそれがあります。

点眼の効果を最大限に引き出すために、1回1滴を正確にさし、複数の点眼薬を使う場合は5分以上の間隔を空けることを守ってください。

定期検査を途切れさせない

緑内障は生涯にわたって付き合う病気で、通常は1〜3ヶ月に1回の眼圧チェックと点眼処方、半年〜1年に1回の視野検査・OCT検査を続けるのが標準的な経過観察のペースです。

症状が安定しているときほど受診間隔が空きやすくなりますが、進行は自覚症状なく起こるため、検査を中断すると気づかないうちに視野欠損が進むことがあります。安定しているからこそ通院を続けることが、視機能を長く保つための基本です。

緑内障の方の生活習慣で気をつけたいこと

緑内障の方の生活習慣で気をつけたいこと

姿勢と薬以外にも、日々の生活習慣の中で眼圧や視神経に影響しうる要素があります。

喫煙は視神経への血流を悪くする

喫煙はニコチンによる血管収縮を引き起こし、視神経への血流を低下させます。1日1箱(20本)を20年以上吸い続けてきたヘビースモーカーは、喫煙歴のない緑内障の方と比べて、視野障害の進行リスクが約2倍になることが、開放隅角緑内障の長期追跡研究で報告されています。禁煙が難しい場合でも、本数を減らすことで血流への悪影響を軽減できます。

参考:Impact of Smoking on Visual Field Progression in a Long-term Clinical Follow-upPubMed

有酸素運動は眼圧を下げる方向に働く

ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動には、眼圧を下げる効果があります。海外の研究では、3ヶ月間有酸素運動を続けたところ眼圧が平均4.6mmHg(約20%)低下しましたが、運動をやめるとわずか3週間で元の眼圧に戻ったことが報告されています。つまり、有酸素運動は「続けること」に意味があるということです。

週に3回程度、30分ほどの軽い運動を習慣にするのがよいでしょう。一方で、息を止めて力むような無酸素運動(重い重量を使った筋力トレーニングなど)は一時的に眼圧を上げるため、緑内障の方は避けたほうが安心です。

参考:Exercise training reduces intraocular pressure among subjects suspected of having glaucomaPubMed

水分は「一気飲み」を避ける

短時間に大量の水分を摂ると、房水の量が増えて眼圧が上がります。500mLの水を一気に飲むと、眼圧が3〜4mmHg、最大で7mmHg程度上昇するというデータがあります。

短時間に一気飲みすることを避ければ問題ありません。水分補給自体を制限する必要はなく、飲み方の工夫だけで十分です。

参考:Understanding the mechanism of the water drinking test: the role of fluid challenge volume in patients with medically controlled primary open angle glaucomaPubMed

緑内障でしてはいけないことに関するよくある質問

緑内障でしてはいけないことに関するよくある質問

緑内障でもコンタクトレンズは使えますか?

緑内障の点眼薬を使っている場合、コンタクトレンズの装着は原則として可能ですが、点眼のタイミングに注意が必要です。ソフトコンタクトレンズは薬剤の成分を吸収してしまうため、レンズを外してから点眼し、5〜10分経ってから再装着するのが基本です。使用中の点眼薬との相性もあるため、担当の眼科医に確認してから使用してください。

緑内障があるとレーシックは受けられませんか?

緑内障がある場合、レーシックは原則として推奨されません。手術によって角膜の厚みが変わると、術後の眼圧測定値が実際より低く表示されるようになり、緑内障の管理に支障が出るためです。代替としてICL(眼内コンタクトレンズ)を検討できるケースもありますが、いずれにしても眼科医との慎重な相談が必要です。

カフェインやお酒は控えるべきですか?

適度なカフェイン摂取(コーヒー1日2〜3杯程度)や飲酒は、特に制限する必要はありません。ただし、大量のカフェインは一時的に眼圧を上げる可能性があり、また過度な飲酒は血圧変動を通じて眼圧コントロールに影響する場合があります。いずれも「適量を楽しむ」分には問題ありません。

まとめ

まとめ

緑内障の管理は、姿勢や薬の注意点を踏まえつつ、点眼と定期検査を生涯にわたって続けることが基本です。同じ眼科に長く通い続けられる環境を整えておくことが、視野を守るうえで最も大きな投資になります。

おぎくぼ南口眼科では、OCT検査・視野検査を含めた緑内障の経過観察に対応しています。複数の眼科専門医が連携して長期管理にあたり、点眼治療からレーザー治療、日帰り手術まで一貫して提供しています。日常生活での不安や他科で処方された薬について気になることがあれば、診察時にお気軽にご相談ください。

監修者情報

おぎくぼ南口眼科 院長 本田理恵

おぎくぼ南口眼科

院長 本田理恵

当院では、かすみ目や視力低下、疲れ目等の一般眼科診療はもちろん、お子様の斜視や弱視といった小児眼科診療等も行い、老若男女皆様の目の健康維持・増進に努めております。スタッフ一同丁寧でわかりやすいご説明を心がけ、かかりつけ医として長くお付き合いいただけるクリニックを目指しています。

経歴

  • 埼玉医科大学医学部卒業
  • 東邦大学大橋病院眼科
  • 東京歯科大学市川総合病院眼科
  • 東京歯科大学水道橋病院眼科を経て平成25年 おぎくぼ南口眼科 開院

資格・認定

  • 日本眼科学会 専門医
  • 日本眼科手術学会 会員
  • 日本白内障屈折矯正手術学会 会員