白内障の手術後にぼやけるのはなぜ?原因と受診の目安

白内障手術の後にぼやけを感じたとき、その原因はいつから・どんなパターンで起きているかで見分けがつきます。手術直後に出るぼやけと、しばらく経ってから再び出てくるぼやけでは、原因も対処もまったく異なります。受診するか様子を見るかの判断軸を、この記事で整理します。

白内障手術後にぼやけるのは正常か

白内障手術後にぼやけるのは正常か

術後のぼやけは、その時期によって意味合いが大きく変わります。「いつからぼやけているか」を整理すると、自分の状態が正常な回復の範囲内なのか、それとも受診が必要なのかが判断しやすくなります。

術後1〜2週間のぼやけは回復の途中

手術直後から1〜2週間程度のぼやけは、多くの方に起こる一時的な症状です。手術中に角膜に触れた影響で角膜が軽くむくみ、光の屈折が一時的に乱れます。このむくみは数日から1〜2週間で自然におさまり、見え方は術後1〜2ヶ月かけて徐々に安定していくのが一般的な経過です。

また、濁っていた水晶体が透明な眼内レンズに変わるため、手術直後は「まぶしい」「色が青白く見える」と感じる方もいます。これは目が新しいレンズに慣れていく過程で起こるもので、脳が見え方の変化に適応するにつれて落ち着いてきます。

1ヶ月以上続く場合は別の原因を疑う

術後1ヶ月を過ぎてもぼやけが改善しない、あるいは一度はクリアに見えるようになったのに再びぼやけてきた場合は、別の原因が関わっている可能性があります。代表的なものとしてドライアイ、後発白内障、嚢胞様黄斑浮腫などがあり、原因ごとに対処法がまったく異なるため、眼科での検査が必要です。

「手術は成功したはずなのに」と不安を感じる方もいますが、こうした症状は白内障手術に特有のもので、原因が特定できれば改善できるケースがほとんどです。

参考:白内障手術を受ける方へ知っておきたい白内障術後のケア|公益社団法人日本眼科医会

白内障の手術後にぼやける主な原因

白内障の手術後にぼやける主な原因

ぼやけの原因は、手術直後に起こるものと、数ヶ月〜数年後に現れるものに分かれます。それぞれメカニズムが異なるため、ここでは代表的な4つを取り上げます。

角膜のむくみ(角膜浮腫)

手術直後のぼやけによくある原因のひとつです。手術中に角膜の内側にある角膜内皮細胞が刺激を受けると、角膜に水分がたまってむくみが生じます。むくんだ角膜は光をきれいに通さなくなるため、視界全体がかすんだように見えます。

軽度のむくみであれば処方された点眼薬を使いながら数日〜1週間程度で回復します。ただし、もともと角膜内皮細胞の数が少ない方は回復に時間がかかることがあるため、術前の角膜内皮細胞検査の結果を担当医に確認しておくと安心です。

ドライアイによる涙の不安定さ

白内障手術では角膜に小さな切開を入れます。この切開によって角膜の表面にある神経が一時的に切断され、涙の分泌バランスが崩れます。涙の膜が不安定になると、光の屈折にムラが出てぼやけや「見えたり見えなかったりする」感覚が生じます。

ドライアイによるぼやけは、まばたきの直後に一瞬クリアに見えて、すぐにまたぼやけるという特徴があります。この特徴に心当たりがある場合は、ドライアイが原因の可能性が高く、人工涙液の点眼で改善が期待できます。術前からドライアイの傾向がある方は症状が出やすいため、手術前に担当医に伝えておくことが大切です。

後発白内障(後嚢混濁)

手術後しばらくしてから再びぼやけてくる原因として、最も頻度が高いのが後発白内障です。白内障手術では水晶体の中身を取り出し、残した水晶体の袋(嚢)の中に眼内レンズを入れます。この袋の後ろ側(後嚢)に残った細胞が増えて濁ってくるのが後発白内障で、眼内レンズの種類によって幅はありますが、術後5年で約20%(7〜23%程度)の方に起こります。

症状はかすみ目やぼやけで、白内障が再発したかのように感じますが、眼内レンズそのものには問題ありません。後嚢が濁ることでレンズの後ろに曇りガラスが入ったような状態になり、見え方が悪くなります。後発白内障は治療で改善できるため、「手術をしたのにまた見えなくなった」と落胆する必要はありません。

参考:5 year incidence of YAG capsulotomy and PCO after cataract surgery with single-piece monofocal intraocular lenses(PubMed)

嚢胞様黄斑浮腫

頻度としてはまれですが、術後に網膜の中心部(黄斑部)にむくみが生じることがあります。黄斑は「ものを見る」機能の中心を担っているため、ここがむくむと視界の中央がぼやけたり、ゆがんで見えたりします。

視力に影響が出るケースは全体の1〜2%程度で、多くは抗炎症の点眼薬によって改善します。ただし、糖尿病のある方やぶどう膜炎の既往がある方は発症しやすい傾向があるため、該当する方は術後の定期検診を欠かさず受けることが重要です。

参考:Clinical pseudophakic cystoid macular edema. Risk factors for development and duration after treatmentPubMed

後発白内障はレーザーで治療できる

後発白内障はレーザーで治療できる

後発白内障の治療にはYAGレーザーを使います。濁った後嚢にレーザーを照射して小さな穴を開け、光の通り道を確保する方法です。

治療にかかる時間は5分程度で、痛みもほとんどありません。点眼麻酔をしたうえでレーザー用のコンタクトレンズを目に当て、濁った部分にレーザーを照射します。入院は不要で、当日のうちに帰宅できます。

治療後は多くの場合、その日のうちに視界の改善を実感します。一度レーザーで後嚢を切開すると、同じ場所が再び濁ることは基本的にないため、繰り返し治療が必要になることはまれです。

費用は保険適用で、3割負担の場合は片目で約5,000円が目安です。治療の翌日と約1週間後に経過観察のための受診が必要ですが、それ以降は通常の定期検診に戻る方がほとんどです。

ただし、レーザー治療後にまれに眼圧が一時的に上がったり、飛蚊症(視界に小さな浮遊物が見える症状)が出たりすることがあります。いずれも一時的なことが多いですが、気になる症状があれば早めに受診してください。

おぎくぼ南口眼科では、後発白内障に対して外来で日帰り治療を行っており、術後の経過観察からレーザー治療まで同じ医院で対応しています。

白内障の手術後に違和感を感じたら…受診すべきタイミング

白内障の手術後に違和感を感じたら…受診すべきタイミング

術後のぼやけがどのような場合に受診すべきかは、時期と症状の変化で判断できます。以下の状況に当てはまる場合は、次の定期検診を待たずに早めに眼科を受診してください。

  • 術後1ヶ月を過ぎてもぼやけが改善しない
  • 一度はクリアに見えるようになったのに、再びぼやけてきた
  • ぼやけと一緒に目の痛みや充血がある
  • 視界の一部が暗くなった、または光がチカチカ見える
  • ものがゆがんで見える

特に「一度は見えるようになったのに、また見えにくくなった」というパターンは後発白内障の典型的な経過です。術後数ヶ月で起こる方もいれば、数年後に起こる方もいるため、手術から時間が経っていても、見え方の変化を感じたら受診することが大切です。

白内障の手術に関するよくある質問

白内障の手術に関するよくある質問

白内障手術後、眼鏡はいつ作れますか?

術後すぐは見え方が安定していないため、眼鏡の作成は術後1〜2ヶ月経ってからが一般的です。この時期に眼鏡処方を受けると、度数が安定した状態で合わせられます。仕事などで急ぎの場合は、術後1ヶ月程度で暫定の眼鏡を作り、3ヶ月後に微調整するという方法もあります。

後発白内障は予防できますか?

現時点では、後発白内障を確実に防ぐ方法はありません。術後の点眼薬を正しく使い、炎症を抑えることが間接的な予防につながりますが、後嚢の濁りは体の自然な反応として起こるものです。ただし、仮に発症してもYAGレーザーで速やかに改善できるため、過度に心配する必要はありません。

手術後にまぶしく感じるのはいつまで続きますか?

まぶしさは術後1〜2週間で落ち着く方が多く、1〜2ヶ月程度で慣れてくるのが一般的です。術直後は白内障で暗くなっていた視界が一気に明るくなるため、以前よりまぶしく感じます。外出時にサングラスを使うと楽に過ごせます。

まとめ

まとめ

白内障の手術後にぼやけると「手術は成功したのか」と不安になりますが、多くは一時的な症状か、治療で改善できる原因によるものです。

術後1〜2週間のぼやけは角膜のむくみや目の適応過程による正常な経過であり、見え方は1〜2ヶ月かけて安定していきます。一方、時間が経ってから再びぼやけてきた場合は後発白内障の可能性があり、レーザー治療で視界を取り戻すことができます。

大切なのは、見え方の変化に気づいたときに放置しないことです。おぎくぼ南口眼科では白内障の日帰り手術から術後の経過観察まで一貫して対応しています。ぼやけの原因を正確に突き止めるためにも、気になる症状があればお気軽にご相談ください。

監修者情報

おぎくぼ南口眼科 白内障手術執刀医 ビッセン宮島弘子(日本白内障学会評議員)

おぎくぼ南口眼科

白内障手術執刀医 ビッセン宮島弘子(日本白内障学会評議員)

白内障、屈折矯正手術分野では、国内のみならず国際的に高い評価を得ており、国際学会の手術ビデオコンテストでは、最優秀賞2回、部門賞12回、眼科で最も貢献した医師に贈られる賞をアメリカ、ドイツ、アジア太平洋の学会で受賞している。2006年国際眼内レンズ学会で女性初の会長就任、2010年より2018年まで日本白内障屈折矯正手術学会理事長、2018年よりアジア太平洋白内障屈折手術学会理事長を歴任。

経歴

  • 1981年 慶應義塾大学医学部卒業
  • 慶應義塾大学医学部眼科学教室入局
  • 1984年 ドイツ ボン大学眼科助手
  • 1987年 慶應義塾大学医学部眼科学教室助手
  • 1989年 国立埼玉病院眼科医長
  • 1995年 東京歯科大学市川総合病院眼科講師
  • 慶應義塾大学医学部眼科学教室非常勤講師
  • 2000年 東京歯科大学水道橋病院眼科助教授
  • 2003年 東京歯科大学水道橋病院眼科教授
  • 2022年 東京歯科大学水道橋病院眼科特任教授・名誉教授 現在に至る

資格・認定

  • 日本白内障学会 評議員
  • 日本老視学会 理事
  • 日本眼科学会 会員
  • 日本眼科医会 会員

【多焦点眼内レンズに関する重要事項】

多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は「選定療養」の対象となり、手術代・薬代等は健康保険が適用され、眼内レンズの費用のみ自費負担となります。当院で使用する多焦点眼内レンズはすべて厚生労働省の承認を受けた選定療養対象品(クラレオンパンオプティクス、テクニスシナジー、テクニスオデッセイ、クラレオンビビティ、テクニスピュアシー等)で、国内未承認のレンズは取り扱っておりません。

  • 治療内容:白内障手術で多焦点眼内レンズを挿入する治療
  • 治療期間・回数:日帰り手術。片目ごとに1回(個人差あり)
  • 費用の目安:多焦点眼内レンズの自費部分は片目あたり30〜40万円程度(レンズの種類により異なります)
  • リスク・副作用:夜間の光のにじみ(ハロー・グレア)、コントラスト感度の低下、まれに感染症・後発白内障など