白内障の進行速度は「濁る位置」で違う。目安と手術を考えるタイミング

白内障は数年かけてゆっくり進むものというイメージがありますが、タイプによっては数ヶ月で視力が大きく落ちるケースもあります。タイプ別の進行速度と、進行を早める要因、手術を考えるサインをこの記事で整理します。

白内障の進行速度はタイプによって違う

白内障の進行速度はタイプによって違う

白内障は水晶体が濁る位置によって、主に3つのタイプに分かれます。それぞれ進行のペースも、最初に感じる症状も異なります。

皮質白内障:年単位でゆっくり進む

皮質白内障は、水晶体の外側にある皮質と呼ばれる部分から濁りが始まるタイプです。加齢による白内障で最も多く見られます。

濁りは水晶体の周辺部から放射状に広がるため、中心部の透明さが保たれている間は視力への影響が小さく、自覚症状が出るまでに数年かかることも珍しくありません。ただし、濁りが中心部に到達すると、まぶしさやかすみを感じるようになります。特に晴れた日の屋外や夜間の対向車のヘッドライトで強い不快感を覚えるのが、皮質白内障の特徴的な訴えです。

進行が緩やかだからこそ「気づいたときにはかなり進んでいた」ということが起きやすいタイプでもあります。年に1回は眼科で進行度合いを確認しておくと、手術のタイミングを見逃しにくくなります。

核白内障:気づかないうちに近視が進む

核白内障は、水晶体の中央にある核から濁りが始まるタイプです。進行に伴い水晶体全体が硬くなりながら厚みを増すため、屈折力が変わり近視が進みます。

このタイプの特徴的な経過は、ある時期から「近くのものが以前より見やすくなった」と感じることです。老眼が改善したように錯覚する方もいますが、これは水晶体の厚みが増して屈折力が変わったことによる一時的な近視化であり、白内障が進行しているサインです。その後さらに進行すると、遠くも近くも全体的に見えにくくなり、眼鏡でも矯正しきれなくなります。

核白内障は進行するほど水晶体の核が硬くなり、手術時の超音波による破砕に時間がかかるようになります。そのため、核がさらに硬くなる前に手術を行う方が、手術自体の負担が軽く済みます。

後嚢下白内障:数ヶ月で視力が落ちることがある

後嚢下白内障は、水晶体の裏側にある後嚢のすぐ内側から濁るタイプです。3つのタイプの中で最も進行が速く、2〜3ヶ月で急に見えにくくなるケースがあります。

濁りが光の通り道の中心に近い位置で起こるため、ほかのタイプに比べて初期段階から視力低下やまぶしさを自覚しやすいのが特徴です。糖尿病のある方やステロイド薬を長期間使用している方に多く見られます。

後嚢下白内障は進行が急なだけでなく、白内障が進行すると水晶体が膨張して眼圧が上昇し、急性緑内障発作を引き起こすリスクがあります。そのため、ほかのタイプ以上にこまめな経過観察が必要です。

白内障の進行を早める要因

白内障の進行を早める要因

加齢による白内障はゆっくり進むことが多い一方で、体の状態や生活環境によって進行が速まるケースがあります。

全身の病気や薬の影響

糖尿病は白内障の進行を早める代表的な要因です。血糖値が高い状態が続くと水晶体の中にソルビトールという糖の代謝物が蓄積し、水晶体が水分を吸って膨らみやすくなります。この変化が水晶体のタンパク質の構造を乱し、濁りが進みます。

糖尿病のある方は後嚢下白内障を発症しやすく、進行も速い傾向があります。

ステロイドの長期内服も白内障の進行を早める要因として知られています。ステロイド内服による白内障は、発症から数ヶ月〜1年程度で手術が必要になるほど視力が低下することがあります。膠原病や喘息など全身性のステロイド治療を続けている方は、症状が落ち着いている時期でも目の状態を眼科で定期的に確認しておく方が安心です。

アトピー性皮膚炎の方は目の周りをこする刺激が加わるため、若い年齢で白内障が進行するケースもあります。

紫外線や生活習慣の影響

紫外線は水晶体のタンパク質に酸化ストレスを与え、白内障の進行を促します。屋外での仕事やスポーツの時間が長い方は、そうでない方に比べて白内障の発症年齢が早まる傾向があります。外出時にUVカットのサングラスや帽子を使うことは、進行を遅らせるうえで有効な習慣です。

喫煙者の白内障リスクは非喫煙者と比べて約1.4〜1.7倍高いことが複数の研究で示されており、特に核白内障で関連が強いことが報告されています。タバコの煙に含まれる活性酸素が水晶体の酸化を促進するためで、吸う期間が長いほど水晶体へのダメージは積み重なり、禁煙してから時間が経つほどリスクは少しずつ下がっていきます。

参考:白内障 | KOMPAS – 慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト

参考:Smoking and Risk of Age-Related Cataract: A Meta-Analysis(PubMed)

白内障の進行段階ごとの見え方の変化

白内障の進行段階ごとの見え方の変化

白内障はタイプにかかわらず、進行度合いに応じて見え方が段階的に変化します。

初期段階では水晶体の濁りがごくわずかなため、ほとんど自覚症状がありません。この時期は眼科の検査で初めて指摘されることが多く、日常生活に支障がないケースが大半です。

中期になると、目のかすみやまぶしさが日常の中で気になり始めます。「白いもやがかかったように見える」「天気のよい日に外に出ると見えにくい」といった訴えが典型的です。この段階では見え方の変化を実感しているものの、まだ生活に大きな支障をきたしていない方もいます。

進行が進む成熟期になると、視力の低下が明確になり、本を読む・運転する・人の表情を見分けるといった日常動作に支障が出始めます。水晶体全体が白く濁り、眼鏡やコンタクトレンズでの矯正が難しくなります。

さらに進行した過熟期では、著しい視力低下に加えて水晶体が膨張し、急性緑内障発作や水晶体の内容物が眼内に漏れ出すことによる炎症(水晶体融解性ぶどう膜炎)など、手術が緊急に必要な合併症を引き起こすリスクが高まります。ここまで進行すると手術自体の難度も上がるため、できるだけこの段階に至る前に手術を行うことが望まれます。

白内障の進行は止められるか

白内障の進行は止められるか

現時点で、白内障の進行を完全に止める方法はありません。ピレノキシンやグルタチオンといった点眼薬が処方されることがありますが、これらの薬の目的は進行を遅らせることであり、濁った水晶体を透明に戻す効果はありません。

点眼薬の効果については、現在の薬効評価基準を満たす十分なエビデンスが得られているとは言い切れず、実際の効果は限定的という見方が一般的です。初期の段階で処方されることが多いものの、点眼を続ければ手術が不要になるというわけではなく、あくまで進行のペースを穏やかにする補助的な位置づけです。

進行を遅らせるためにできることとしては、先に述べた紫外線対策や禁煙に加え、糖尿病のある方は血糖コントロールを良好に保つことが挙げられます。ビタミンCやビタミンE、ルテインといった抗酸化作用のある栄養素も水晶体の酸化ストレスを軽減する可能性があり、バランスのよい食事を心がけることは目の健康全般に有益です。ただし、サプリメントや食事だけで白内障を予防・治療できるわけではなく、進行が気になる場合は、定期的に眼科で水晶体の状態を確認してもらうのがよいでしょう。

白内障の手術を検討するタイミング

白内障の手術を検討するタイミング

白内障の手術を受けるタイミングに「この年齢になったら」「この進行度になったら」という画一的な基準はありません。手術の判断で最も重要なのは、見え方の変化によって日常生活に支障が出ているかどうかです。

目安としてよく挙げられるのは矯正視力が0.6〜0.7を下回る場合ですが、これはあくまで参考値です。普通自動車免許の更新には両眼で0.7以上の視力が必要であるため、運転をされる方はこの数値がひとつの目安になります。一方、読書やパソコン作業が中心の生活であれば、視力の数字よりも「かすみやまぶしさで作業が続けられない」「色の見え方が変わった」といった自覚症状の方が重要な判断材料です。

ただし、手術を先延ばしにし続けることにもリスクがあります。白内障が進行するほど水晶体の核が硬くなり、手術で水晶体を砕くのに強い超音波エネルギーが必要になります。手術時間が長くなり、角膜への負担も増えるため、術後の回復に時間がかかりやすくなります。

また、前述のとおり過熟期まで進行すると急性緑内障発作などの合併症リスクが高まります。

「今すぐ手術が必要かどうか」は、眼科でその時点の水晶体の濁り具合・視力・眼圧・生活上の困りごとを総合的に評価して判断します。定期的な受診を続けていれば、急に手術を迫られるケースは多くありません。進行を見守りながら、生活に支障が出始めた段階で手術を検討するのが、かかりつけ医と一緒に最適なタイミングを見極める方法です。

白内障の進行速度に関するよくある質問

白内障の進行速度に関するよくある質問

白内障は片目だけ進行することがありますか?

はい、左右の目で進行速度が異なることは珍しくありません。片方の目だけ先に視力が落ち、もう片方はほとんど変わらないという方もいます。左右差が大きくなると見え方のバランスが崩れて疲れやすくなるため、定期検査で左右の進み具合を確認しておくと安心です。

白内障と診断されたらすぐに手術が必要ですか?

初期の段階であれば、すぐに手術が必要になるケースは多くありません。特に皮質白内障のように進行が緩やかなタイプでは、年に1〜2回の定期検査で経過を見ながら手術の時期を検討する方が大半です。ただし、後嚢下白内障のように進行が速いタイプや、糖尿病・ステロイド使用など進行を早める要因がある方は、診察の間隔を短くして状態を把握しておく方がよいでしょう。

白内障の進行度合いは眼科でどのように確認しますか?

白内障の進行度合いは、視力検査に加えて細隙灯顕微鏡(スリットランプ)という機器で水晶体の濁りの位置と程度を直接観察します。皮質・核・後嚢下のどの位置にどれくらい濁りがあるかを段階的に評価することで、視力の数字だけでは把握できない初期の変化や左右差を客観的に追えるのが眼科検査のメリットです。

検査時に瞳孔を広げる目薬を使う場合があり、しばらくはまぶしさを感じやすくなるため、当日のお車の運転は避けてください。

まとめ

まとめ

白内障の進行速度は、水晶体のどこが濁るかによって大きく異なります。最も多い皮質白内障は数年単位でゆっくり進み、核白内障は近視化を伴いながら進行し、後嚢下白内障は数ヶ月で急に見えにくくなることがあります。

進行を早める要因としては糖尿病やステロイドの長期内服、紫外線への長時間の曝露、喫煙などがあり、これらに心当たりのある方はより注意が必要です。点眼薬で進行を完全に止めることはできませんが、紫外線対策・禁煙・血糖コントロールなどの生活習慣の見直しは進行を穏やかにする助けになります。

手術のタイミングは「見え方の変化で生活に困っているかどうか」が最も大切な判断基準です。おぎくぼ南口眼科では、日帰りの白内障手術に対応しており、定期検査で進行の状態を把握しながら、手術が必要になった段階で無理なく対応できる体制を整えています。白内障の進行が気になる方は、まず現在の状態を確認するところから始めてみてください。

監修者情報

おぎくぼ南口眼科 白内障手術執刀医 ビッセン宮島弘子(日本白内障学会評議員)

おぎくぼ南口眼科

白内障手術執刀医 ビッセン宮島弘子(日本白内障学会評議員)

白内障、屈折矯正手術分野では、国内のみならず国際的に高い評価を得ており、国際学会の手術ビデオコンテストでは、最優秀賞2回、部門賞12回、眼科で最も貢献した医師に贈られる賞をアメリカ、ドイツ、アジア太平洋の学会で受賞している。2006年国際眼内レンズ学会で女性初の会長就任、2010年より2018年まで日本白内障屈折矯正手術学会理事長、2018年よりアジア太平洋白内障屈折手術学会理事長を歴任。

経歴

  • 1981年 慶應義塾大学医学部卒業
  • 慶應義塾大学医学部眼科学教室入局
  • 1984年 ドイツ ボン大学眼科助手
  • 1987年 慶應義塾大学医学部眼科学教室助手
  • 1989年 国立埼玉病院眼科医長
  • 1995年 東京歯科大学市川総合病院眼科講師
  • 慶應義塾大学医学部眼科学教室非常勤講師
  • 2000年 東京歯科大学水道橋病院眼科助教授
  • 2003年 東京歯科大学水道橋病院眼科教授
  • 2022年 東京歯科大学水道橋病院眼科特任教授・名誉教授 現在に至る

資格・認定

  • 日本白内障学会 評議員
  • 日本老視学会 理事
  • 日本眼科学会 会員
  • 日本眼科医会 会員