緑内障の目薬の種類と選び方・副作用への向き合い方

緑内障で処方される目薬は、作用の仕組みによって複数の種類に分かれます。最初に処方されることが多い第一選択薬を起点に、眼圧の下がり方や副作用の出方を見ながら、追加・変更していくのが基本の流れです。ご自身が使っている薬がどのタイプか、なぜその薬なのかを知っておくと、日々の点眼に納得感をもって継続できるようになります。

緑内障の目薬にはどのような種類があるか

緑内障の目薬にはどのような種類があるか

緑内障の点眼薬は、作用する場所の違いで複数の種類に分かれます。どれを使うかは眼圧の値だけでなく、持病や生活リズムも加味して決まります。

第一選択:プロスタグランジン関連薬

緑内障治療で最初に処方されることが多いのが、プロスタグランジン関連薬です。房水の排出を促すことで眼圧を下げる薬で、1日1回の点眼で十分な眼圧下降が得られるため、毎日続けやすいのが特徴です。全身への副作用がほとんどないこともあり、日本緑内障学会の緑内障診療ガイドライン(第5版)でも第一選択薬として位置づけられています。

ただし、目の周囲の色素沈着やまつげの伸長・増毛といった局所的な副作用があるため、点眼後の洗顔やふき取りが重要になります。

参考:緑内障診療ガイドライン(第5版)|日本眼科学会

β遮断薬

房水が作られる量を抑えることで眼圧を下げる薬で、1日1〜2回点眼します。プロスタグランジン関連薬の次に古くから使われてきた歴史があり、効果の安定性が高いタイプです。ただし、成分が全身に吸収されると気管支や心臓に影響することがあるため、喘息や心臓疾患のある方には使えない、または慎重に使う必要があります。

内科で処方されている薬がある方は、必ず眼科の主治医にも伝えてください。

炭酸脱水酵素阻害薬

こちらも房水の産生を抑える薬で、1日2〜3回点眼します。局所的な副作用が比較的少なく、他の薬と組み合わせて使われることが多いタイプです。点眼回数が多いので、忘れずに習慣化できるかが選択時のポイントになります。

α2刺激薬

房水の産生を抑えるとともに、排出も促す薬で、1日2回点眼します。眠気やアレルギー反応が出ることがあり、使用初期には体調の変化に注意が必要です。妊娠中・授乳中の方や小児には原則として使用しません。

ROCK阻害薬

房水の排出経路(線維柱帯)に直接働きかけて排出を促す、比較的新しいタイプの薬で、1日2回点眼します。点眼後に結膜の充血が出やすいですが、多くは一過性で時間とともに治まるものです。他のタイプと作用機序が異なるため、既存の薬と併用して眼圧をさらに下げる目的で使われます。

自分に合う緑内障の目薬の選び方

自分に合う緑内障の目薬の選び方

眼圧の値だけでなく、持病や生活リズム、点眼を続けやすい本数まで踏まえて、主治医と一緒に決めていく流れになります。

持病・生活リズム・副作用を踏まえて判断する

持病(喘息や心臓の病気など)、生活リズム(1日1回が限界か、2〜3回でも習慣化できるか)、副作用への感じ方など、複数の要素を総合して判断します。経済的な負担や継続のしやすさも、医師と患者が一緒に決めるうえでの大切な要素です。

内科で処方されている薬がある方は、必ず眼科の主治医にも伝えてください。同じ作用機序の目薬でも、全身に影響する成分かどうかで選択肢が変わります。

「片目トライアル」で効き方を確かめる

実際の診療では、まず片目だけに点眼して効果を確認する「片目トライアル」を行い、もう片方の目と眼圧を比べて薬の効果を判定するケースもあります。「合わなければ変えられる」という前提で始められるので、最初の1本が合わなくても、別の薬剤を試しながらご自身に合う治療を一緒に探していくことができます。副作用や体感に違和感があれば、我慢せず次の受診で主治医に伝えてください。

配合剤で点眼回数を減らす

1種類の点眼薬で目標の眼圧に届かない場合は、2種類以上を併用します。

その際、2つの成分が1本にまとまった「配合剤」を選ぶと、点眼回数や本数を減らせます。「点眼が習慣化しづらい」「本数が増えて面倒」と感じる方は、配合剤に切り替えられる組み合わせがあるか主治医に相談してみてください。

緑内障の目薬は一生続ける必要があるのか

緑内障の目薬は一生続ける必要があるのか

現時点では、緑内障の目薬を自己判断で中断するという選択肢は基本的にありません。その理由を、薬の仕組みと緑内障という病気の特性の両面から説明します。

目薬は「進行を止めるブレーキ」であって「治す薬」ではない

眼球の中には房水と呼ばれる透明な液体が絶えず作られ、循環しています。房水がうまく排出されずにたまると眼球内の圧力(眼圧)が上がり、視神経が圧迫されて少しずつ傷んでいきます。これが緑内障の基本的な仕組みです。

緑内障の目薬は、房水が作られる量を減らす、あるいは房水の排出を促すことで眼圧を下げます。目薬で下がった眼圧は、点眼をやめれば元に戻ります。つまり目薬は血圧の薬と同じ性質で、使っている間だけ効いているブレーキです。

現在の医学では、一度傷んだ視神経を修復する方法はありません。残っている視神経を守ることが治療のすべてであり、だからこそ目薬を毎日続ける必要があります。

自覚症状がないまま進行するという怖さ

緑内障で視野が欠けるのは周辺部分からです。中心はクリアに見え続けるので、本や正面のテレビには支障が出にくく、しかも片目に欠けがあっても反対の目が補ってしまうため、日常生活では気づきにくい構造になっています。「見えているから大丈夫」と感じている間にも視神経は減り続けており、気づいたときには元に戻せない視野欠損が広がっているケースが少なくありません。

日本では40歳以上の約20人に1人が緑内障にかかっており、さらにその約9割がまだ診断を受けていないと推定されています。自覚症状がないために治療の意義を感じにくいのが緑内障の特徴ですが、自覚症状がないからこそ、点眼を続けることが視野を守る唯一の手段です。

参考:The prevalence of primary open-angle glaucoma in Japanese: the Tajimi Study(PubMed)

緑内障の目薬で起こりうる副作用と対処法

緑内障の目薬で起こりうる副作用と対処法

副作用の多くはあらかじめ知っていれば対処でき、つらい場合は薬の変更で解決できることがほとんどです。

プロスタグランジン関連薬に多い副作用

プロスタグランジン関連薬は眼圧を下げる力が強い反面、目の周囲に変化が出やすい薬です。代表的なものは以下の3つです。

  • まぶたや目の周りの皮膚が黒ずむ「色素沈着」
  • まつげが太く長く伸びる「まつげの変化」
  • 上まぶたのくぼみが目立つ「眼瞼溝深化」

これらの変化は点眼液が目の周りの皮膚に付着して起こるため、点眼直後にまぶたを清潔なティッシュでふき取るか、入浴前に点眼して洗い流すことで軽減できます。色素沈着やまつげの変化は、薬を中止すればある程度元に戻ります。ただし、虹彩(茶目の部分)の色が濃くなる変化は元に戻りにくいため、定期受診の際に主治医に確認してもらうようにしてください。

β遮断薬の全身的な副作用

β遮断薬は房水の産生を抑える効果がありますが、薬の成分が目から全身に吸収されることで、血圧低下や心拍数の低下、気管支の収縮を引き起こす場合があります。喘息をお持ちの方や心臓の病気で治療中の方はβ遮断薬が使えないことがあるため、必ず内科で処方されている薬を眼科の主治医にも伝えてください。

息苦しさ、動悸、ふらつきなどの症状が出た場合は、次の受診を待たずに早めに相談してください。

副作用がつらいときは我慢せずに相談する

副作用が気になって自己判断で点眼をやめてしまうケースがありますが、これは最も避けてほしい行動です。目薬を中断すると眼圧が再び上昇し、気づかないうちに視神経へのダメージが進む可能性があります。

副作用がつらい場合は、主治医に相談すれば薬の種類を変更したり、配合剤に切り替えたりして対処できます。副作用を理由に自己中断するのではなく、主治医と一緒に「続けられる薬」を探すことが大切です。

緑内障の目薬の正しいさし方

緑内障の目薬の正しいさし方

毎日の点眼で薬の効果をきちんと引き出すために、基本の手順を押さえておきましょう。

基本の手順

  1. 石けんで手を洗い、清潔な状態にする
  2. 少し上を向き、下まぶたを軽く引いて、容器の先がまぶたやまつげに触れないように1滴だけ落とす
  3. 点眼後はまばたきをせず、目を閉じて1〜5分ほどそのまま待つか、目頭(鼻の付け根のあたり)を軽く押さえる
  4. あふれた液はティッシュやガーゼでふき取る

1回の点眼は1滴で十分です。目に保持できる液量は約30マイクロリットルですが、目薬1滴は約50マイクロリットルあるため、1滴でも目の表面からあふれるほどの量があります。2滴以上さしても効果は変わらず、副作用のリスクだけが増えます。

複数の目薬を使うときの間隔

2種類以上の目薬を処方されている場合は、1つ目の点眼から5分以上間隔をあけて次の薬をさす必要があります。間隔を空けずに続けてさすと、先にさした薬が後の薬で洗い流されてしまい、十分な効果が得られません。

点眼の順番に特別な決まりはありませんが、主治医から指定がある場合はその指示に従ってください。毎日決まった時間に点眼する習慣をつけておくと、さし忘れを防ぎやすくなります。

緑内障の目薬だけでは足りないとき

緑内障の目薬だけでは足りないとき

点眼治療を続けていても眼圧が十分に下がらない場合や、視野の欠損が進行している場合には、次の段階の治療を検討します。

レーザー治療(SLT)

SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)は、房水の排出口である線維柱帯にレーザーを照射して排水機能を改善する治療です。外来で受けられ、痛みもほとんどありません。目薬の本数を減らしたい場合や、点眼治療の効果が不十分な場合に選択されることがあります。

手術

レーザー治療でも眼圧のコントロールが難しい場合は、手術による治療を検討します。房水の新しい排出路を作る手術や、排出口を広げる手術など、病状に応じた方法があります。手術をしたからといって目薬が完全に不要になるとは限りませんが、目薬の種類や本数を減らせる可能性があります。

点眼・レーザー・手術のどれを選ぶかは、眼圧の状態と視野の進行度、そして生活への影響を総合して主治医と相談して決めるものです。治療法は一方通行ではなく、状況に応じて組み合わせたり切り替えたりしながら、長期的に視野を守っていく設計になっています。

緑内障の目薬に関するよくある質問

緑内障の目薬に関するよくある質問

市販の目薬を緑内障の治療に使うことはできますか?

市販の目薬には緑内障の治療に必要な眼圧を下げる成分は含まれていません。ドライアイや疲れ目の症状がある場合に市販の目薬を使うこと自体は問題ありませんが、緑内障の処方薬の代わりにはなりません。また、市販の目薬の中には緑内障の方が使用を避けるべき成分を含むものもあるため、購入前に主治医や薬剤師に確認しておくと安心です。

緑内障の目薬をさし忘れたらどうすればよいですか?

気づいた時点でさしてください。ただし、次の点眼の時間が近い場合は、忘れた分をさす必要はありません。2回分を一度にさすのは副作用のリスクが増えるだけなので避けてください。

さし忘れが頻繁に起きる場合は、スマートフォンのアラーム機能を使ったり、洗顔や歯みがきなど鏡の前に立つ毎日の習慣と点眼をセットにしたりすると忘れにくくなります。

緑内障の目薬の費用はどのくらいかかりますか?

緑内障の点眼薬は保険適用です。使用する薬の種類と本数によりますが、3割負担の場合、目薬代は月額1,000〜3,000円程度が目安になります。複数の目薬を併用している場合や、検査費用を含めると月の負担はやや増えますが、ジェネリック医薬品への切り替えで費用を抑えられる場合もあります。

経済的な負担が気になるときは、主治医に相談してみてください。

まとめ

まとめ

緑内障の目薬は、今ある視野を守るために眼圧を下げ続ける治療です。副作用や本数の悩みがあっても、薬の変更や配合剤への切り替えで続けやすい組み合わせが見つかることがほとんどです。自己判断でやめずに主治医に率直に伝えることが、無理なく続けられる治療を見つける第一歩になります。

おぎくぼ南口眼科では、眼圧測定・OCT検査・視野検査を通じて緑内障の状態を定期的に確認し、複数の眼科専門医が連携してお一人おひとりに合った点眼治療をご提案しています。レーザー治療・日帰り手術まで一貫して対応していますので、目薬の使い方や副作用、長期通院に不安がある方は、お気軽にご相談ください。

監修者情報

おぎくぼ南口眼科 院長 本田理恵

おぎくぼ南口眼科

院長 本田理恵

当院では、かすみ目や視力低下、疲れ目等の一般眼科診療はもちろん、お子様の斜視や弱視といった小児眼科診療等も行い、老若男女皆様の目の健康維持・増進に努めております。スタッフ一同丁寧でわかりやすいご説明を心がけ、かかりつけ医として長くお付き合いいただけるクリニックを目指しています。

経歴

  • 埼玉医科大学医学部卒業
  • 東邦大学大橋病院眼科
  • 東京歯科大学市川総合病院眼科
  • 東京歯科大学水道橋病院眼科を経て平成25年 おぎくぼ南口眼科 開院

資格・認定

  • 日本眼科学会 専門医
  • 日本眼科手術学会 会員
  • 日本白内障屈折矯正手術学会 会員