緑内障になりやすい人の特徴。リスクが高まる条件と早期発見のために必要なこと

緑内障は、40歳以上の日本人の約5%、つまり20人に1人に見つかる病気です。にもかかわらず、そのうち約9割の方がご自身の緑内障に気づいていません。これは緑内障が「自覚症状のないまま視野が少しずつ狭くなる」病気だからであり、気づいたときにはかなり進行していたというケースも少なくありません。

では、どのような方が緑内障になりやすいのか。リスク因子を正しく知り、自分が当てはまるかどうかを確認しておくことが、早期発見への第一歩になります。

参考:日本緑内障学会多治見疫学調査

緑内障になりやすい人に共通するリスク因子

緑内障になりやすい人に共通するリスク因子

緑内障のリスク因子はひとつではなく、年齢・遺伝・目の構造・全身疾患など複数の要素が重なることで発症リスクが高まります。以下では、特に影響の大きい因子を取り上げます。

40歳以上の方

緑内障は加齢とともに有病率が上がる病気です。日本緑内障学会の多治見スタディでは、40歳代の有病率は2.2%ですが、60歳代で6.3%、70歳代で10.5%と年齢が上がるにつれ右肩上がりに増えていきます。70歳を超えると10人に1人が緑内障を持っている計算で、年齢は緑内障の重要なリスク因子のひとつです。

加齢に伴って視神経の耐久力が落ち、同じ眼圧でも神経がダメージを受けやすくなることがその理由です。40歳を過ぎたら「まだ見えているから大丈夫」ではなく、見えているうちに検査を受けておくという考え方が重要になります。

参考:日本緑内障学会多治見疫学調査

血縁者に緑内障の方がいる場合

緑内障には遺伝的な要素があり、両親や兄弟など近い血縁者に緑内障の方がいると、ご自身の発症リスクも高くなります。海外の大規模な調査では、緑内障の方の親・兄弟・子どもが生涯のうちに緑内障と診断される割合は約22%で、家族歴がない方(約2%)と比べて高い水準でした。家族に緑内障の方がいる場合、ご自身もリスクが高い状態にあると考えておくとよいでしょう。

遺伝だけで発症が決まるわけではなく、環境因子やほかのリスク因子との組み合わせで最終的なリスクが変わります。ただし、家族歴がある方は「将来なるかもしれない」ではなく「すでにリスクが高い状態にある」と捉え、40歳を待たずに眼科での検査を始めておくことが早期発見につながります。

参考:Genetic Risk of Primary Open-angle GlaucomaJAMA Ophthalmology, 1998

強度近視の方

近視が強い方、特に-6D(ジオプター)を超える強度近視の方は緑内障のリスクが高くなります。近視が強くなると眼球が奥行き方向に伸びるため、視神経が物理的に引っ張られて変形しやすく、通常の眼圧でも神経が傷みやすくなるのです。

さらに、強度近視の目は視神経乳頭の形が通常と異なるため、眼底検査だけでは緑内障の変化と近視による変化の区別がつきにくいという問題もあります。OCT(光干渉断層計)を使って網膜の神経線維の厚みを測ることで、強度近視でも緑内障の早期変化を検出できるようになっています。近視が強い方は、通常の健康診断の眼底検査だけでは不十分なことがあるため、眼科での精密検査が重要です。

糖尿病がある方

糖尿病は目にさまざまな合併症を引き起こす病気で、緑内障のリスク因子のひとつでもあります。糖尿病網膜症が進行すると、網膜の血管がつまって酸素不足になり、本来は存在しない新生血管が目の中に生えてきます。この新生血管が房水(目の中を循環する液体)の排出口を塞いでしまうと、眼圧が急激に上がり、新生血管緑内障という治療が難しいタイプの緑内障に至ることがあります。

糖尿病がある方は、血糖値のコントロールと並行して定期的な眼科検診を続けることが、緑内障を含む目の合併症を防ぐうえで欠かせません。

ステロイド点眼や内服を続けている方

ステロイド薬は、眼に直接届く投与経路ほど眼圧上昇のリスクが高くなります。

投与経路 眼への届き方
ステロイド点眼薬・眼周囲への外用 眼に直接届くため眼圧が上がりやすい
経口(内服)ステロイド 全身をめぐって眼にも届く(用量・期間で変わる)
吸入・点鼻・体幹四肢への外用 眼に届く量が少ない

アレルギー性結膜炎などで処方されたステロイド点眼を眼科の管理なしに長く使うと、2〜4週間ほどで眼圧が上がり始めます。上がり方には個人差があり、一部の方は正常の上限(21mmHg)を大きく超えるところまで上昇します。膠原病や喘息でステロイドを長期に内服している方も、定期的に眼圧を測っておくと安心です。

アトピー性皮膚炎で顔やまぶたの周りにステロイド軟膏を長く使っている方は、皮膚から眼に成分が移りやすいうえ、アトピー自体もリスク因子になるため、特に注意が必要です。

一方、吸入や点鼻、体に塗るタイプのステロイドは眼に届く量が少なく、これらを使っているからといって過度に心配する必要はありません。

注意したいのは、ステロイドによる眼圧上昇はほとんど自覚症状がないという点です。眼圧が上がっていても、減量・中止や眼圧を下げる点眼薬で対処できることが多いため、自己判断でやめず、眼科と処方医の両方に相談してください。

参考:Corticosteroid-Induced Glaucoma and Intraocular Pressure(米国眼科学会)

参考:緑内障診療ガイドライン(第5版)|日本眼科学会

日本人に多い「正常眼圧緑内障」を知っておく

日本人に多い「正常眼圧緑内障」を知っておく

「眼圧が高い人が緑内障になる」というイメージを持っている方は多いのですが、日本人の緑内障はそのイメージとは異なる特徴を持っています。

眼圧が正常でも緑内障になる

多治見スタディの結果では、原発開放隅角緑内障(最も多いタイプの緑内障)のうち、眼圧が正常範囲(21mmHg以下)なのに視神経が傷んでいる「正常眼圧緑内障」が全体の約9割を占めていることがわかっています。具体的には、正常眼圧緑内障の有病率は3.6%であるのに対し、眼圧が高いタイプの開放隅角緑内障は0.3%にとどまります。

つまり、健康診断で「眼圧は正常です」と言われたからといって、緑内障ではないとは限りません。眼圧が正常範囲でも視神経が傷んでいる可能性がある、これが日本人の緑内障の最も重要な特徴です。

参考:日本緑内障学会多治見疫学調査

正常眼圧緑内障はなぜ起こるのか

正常眼圧緑内障が起こる正確なメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、現在有力な仮説は2つあります。ひとつは視神経への血流が不足しやすい体質、もうひとつは視神経そのものが眼圧に対して弱い(感受性が高い)というものです。

低血圧や片頭痛がある方は、目への血流が不安定になりやすく、正常眼圧緑内障のリスクが高くなる可能性があります。「血圧が低いのは健康」と思われがちですが、目の視神経にとっては必ずしもよいことばかりではないのです。

日常生活の中で眼圧を上げやすい習慣

日常生活の中で眼圧を上げやすい習慣

緑内障のリスク因子には、体質や年齢のように変えられないものと、生活習慣のように意識すれば改善できるものがあります。

うつぶせ寝や長時間の下向き姿勢

うつぶせの姿勢で寝ると、頭部に血液が集まりやすくなり、一時的に眼圧が上がります。同じ理由で、スマートフォンやタブレットを長時間下を向いて見続ける姿勢も眼圧の上昇につながる可能性があります。一時的な眼圧上昇がすぐに緑内障を引き起こすわけではありませんが、もともとリスク因子を持っている方にとっては、日常的に繰り返すことで視神経への負担が積み重なる心配があります。

喫煙

喫煙は血管を収縮させ、全身の血流を悪くします。目の視神経に栄養を届ける血管も例外ではなく、喫煙による血流低下は視神経にダメージを与える原因になりえます。緑内障のリスク因子をほかにも持っている方は、禁煙を検討することが目の健康を守るひとつの手段になります。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に呼吸が繰り返し止まる睡眠時無呼吸症候群は、夜間に血液中の酸素濃度が下がり、視神経への酸素供給が不足する原因になります。いびきが大きい方や、日中に強い眠気を感じる方は、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があります。この場合、内科や耳鼻科での検査と治療が、目を守ることにもつながります。

緑内障の早期発見に必要な検査

緑内障の早期発見に必要な検査

緑内障は自覚症状がほとんどないまま進行するため、「症状が出てから受診する」のでは手遅れになることがあります。視野が欠けたことに気づいたときには、すでに視神経の相当部分が傷んでいるケースが少なくありません。

眼圧検査だけでは見逃す

先に述べたとおり、日本人に最も多い開放隅角緑内障の約9割は正常眼圧緑内障です。つまり、眼圧だけを測って「正常ですね」と言われても、それだけでは緑内障の有無を判断できません。緑内障を見つけるには、眼圧検査に加えて眼底検査・視野検査・OCT検査を組み合わせる必要があります。

眼科で受けられる緑内障の検査

緑内障の診断に使われる主な検査は以下のとおりです。

検査名 わかること
眼圧検査 眼球内部の圧力。高い場合は緑内障のリスクが上がる
眼底検査 視神経乳頭(視神経の出口)の形や色の変化
視野検査 見える範囲の欠けがないか。緑内障の進行度がわかる
OCT検査 網膜の神経線維の厚みを数値で測定。視野に異常が出る前の早期変化を検出できる

特にOCTは、視野検査で異常が見つかるよりも前の段階で網膜の神経の層が薄くなる変化を捉えられるため、早期発見において重要な検査です。

検査を受ける頻度の目安

リスク因子がない方でも、40歳を過ぎたら一度は眼科で緑内障のスクリーニング検査を受けておくことをおすすめします。異常がなければ1〜2年に1回のペースで経過を見ていけば十分です。

一方、家族に緑内障の方がいる、強度近視がある、糖尿病があるなどリスク因子を持っている方は、40歳より前でも検査を始め、半年〜1年に1回の定期検査を続けることが早期発見の確率を高めます。「見えているから大丈夫」ではなく、「見えているうちに見つける」ための検査だと考えてください。

緑内障に関するよくある質問

緑内障に関するよくある質問

緑内障は片目だけに起こりますか?

緑内障は両目に起こることが多い病気ですが、左右で進行の程度が異なるケースは珍しくありません。片目の視野が欠けていても、もう片方の目が補ってしまうため、日常生活では異常に気づきにくくなります。月に一度、片目ずつ手で覆って見比べる「片目チェック」を習慣にしておくと、片目だけの変化に早く気づけます。

コンタクトレンズを使っていると緑内障になりやすいですか?

コンタクトレンズの使用そのものが緑内障の直接的なリスク因子になるという明確なエビデンスはありません。ただし、コンタクトレンズを使っている方は近視が強い場合が多く、強度近視は緑内障のリスク因子です。コンタクトレンズの定期検診では眼圧測定や眼底検査が含まれない場合もあるため、強度近視や家族歴がある方は「緑内障のチェックもしておきたい」と眼科に伝えておくと安心です。

緑内障は一度なったら治りませんか?

緑内障で失われた視野は、現在の医療技術では元に戻すことができません。しかし、点眼薬やレーザー治療、手術によって眼圧を下げることで、進行を遅らせたり止めたりすることは可能です。だからこそ、視野が大きく欠ける前に発見し、早期に治療を始めることが大切になります。

まとめ

まとめ

緑内障になりやすい人の代表的なリスク因子は以下のとおりです。

  • 40歳以上
  • 家族(親・兄弟など)に緑内障の方がいる
  • 強度近視(-6Dを超える)
  • 糖尿病
  • ステロイド点眼や経口ステロイドの長期使用
  • 低血圧・片頭痛・睡眠時無呼吸症候群

日本人の緑内障の約9割は眼圧が正常範囲の「正常眼圧緑内障」であるため、眼圧検査だけでは見つけることができません。当てはまるものがひとつでもあれば、症状がなくても眼科での精密検査を受けておくと安心です。

おぎくぼ南口眼科では、眼圧検査・眼底検査・視野検査・OCT検査を組み合わせた緑内障のスクリーニング・経過観察に対応しています。複数の眼科専門医が連携して長期管理にあたり、点眼治療からレーザー治療、日帰り手術まで一貫して提供しています。検査で気になる結果が出た方や、家族歴が気になる方は、お気軽にご相談ください。

監修者情報

おぎくぼ南口眼科 院長 本田理恵

おぎくぼ南口眼科

院長 本田理恵

当院では、かすみ目や視力低下、疲れ目等の一般眼科診療はもちろん、お子様の斜視や弱視といった小児眼科診療等も行い、老若男女皆様の目の健康維持・増進に努めております。スタッフ一同丁寧でわかりやすいご説明を心がけ、かかりつけ医として長くお付き合いいただけるクリニックを目指しています。

経歴

  • 埼玉医科大学医学部卒業
  • 東邦大学大橋病院眼科
  • 東京歯科大学市川総合病院眼科
  • 東京歯科大学水道橋病院眼科を経て平成25年 おぎくぼ南口眼科 開院

資格・認定

  • 日本眼科学会 専門医
  • 日本眼科手術学会 会員
  • 日本白内障屈折矯正手術学会 会員