白内障というと「目が白く濁る病気」という印象が強いかもしれませんが、見た目に白さが現れるのはかなり進行してからで、それまでは痛みもなくゆっくり進むため変化に気づきにくい病気です。

この記事では、白内障で実際に現れる代表的な症状から、老眼との見分け方、眼科を受診する目安までを整理し、ご自身の見え方の変化が白内障のサインかどうかを判断できるようにします。

白内障の症状にはどのようなものがあるか

白内障の症状にはどのようなものがあるか

白内障の症状は、水晶体の濁り方や濁る場所によって現れ方が異なります。代表的な症状を知っておくと、自分の見え方の変化が白内障によるものかどうかを判断する手がかりになります。

視界がかすむ、ぼやけて見える

白内障で最も多い自覚症状は、視界全体にうっすら膜がかかったようなかすみです。曇りガラス越しに景色を見ているような感覚で、眼鏡やコンタクトレンズの度数を合わせ直しても改善しません。水晶体そのものが濁っているため、レンズの矯正では対応できないのです。

かすみは朝から夜まで一日中続くことが多く、片目ずつ確認すると左右で見え方に差があることに気づく場合もあります。

光をまぶしく感じる

水晶体の一部が濁り、残りの透明な部分との境界で光が乱反射すると、以前よりも強いまぶしさを感じるようになります。日差しの強い屋外だけでなく、対向車のヘッドライトや室内の照明でもまぶしさを覚えるのが特徴です。暗い場所から明るい場所に出たときだけでなく、普段の生活の中で「最近やけにまぶしい」と感じるようになったら、水晶体の濁りによる光の乱反射が起きている可能性があります。

ものが二重・三重に見える

水晶体の中に濁った部分と透明な部分が混在すると、光が複数の経路で網膜に届くため、ひとつのものが二重や三重にだぶって見えることがあります。この現象は「単眼複視」と呼ばれ、片目を閉じても二重に見えるのが特徴です。両目で見たときだけ二重になる場合は、目の筋肉や神経の問題であることが多く、白内障とは原因が異なります。

片目ずつ確認してみることが見分けるポイントです。

色が黄ばんで見える、暗いところで見えにくくなる

水晶体は加齢とともに黄色みを帯びていきます。この変化はゆっくり進むため本人は気づきにくく、白内障手術の後に「こんなに白かったのか」と驚く方が少なくありません。白い紙が薄くクリーム色に見えたり、青と黒の区別がつきにくくなったりする場合は、水晶体の着色が進んでいるサインです。

また、水晶体の濁りが光を遮ることで、夕方や曇りの日に見えにくさが増す傾向があり、暗い場所でつまずきやすくなったという訴えも珍しくありません。

白内障の症状は水晶体のどこが濁るかで変わる

白内障の症状は水晶体のどこが濁るかで変わる

白内障は「水晶体が濁る」というひとつの病気ですが、濁る場所によって症状の出方と進行のスピードに大きな差があります。眼科の検査では濁りの位置を確認するため、自分のタイプがわかると経過のイメージを持ちやすくなります。

皮質白内障:まぶしさが先行するタイプ

水晶体の外側(皮質)から濁りが始まるタイプで、加齢性白内障の中で最も多く見られます。濁りは周辺部から中心に向かって広がるため、初期には視力検査で問題が出にくく、自覚症状もほとんどありません。濁りが中心部に近づくにつれて光の散乱が起き、まぶしさやかすみが徐々に強くなるのが皮質白内障の特徴です。

進行は比較的ゆっくりで、年単位で経過を見ていくことが多いタイプです。

核白内障:近視が急に進むタイプ

水晶体の中心部(核)が硬く濁るタイプです。核が厚みを増すとレンズの屈折力が強まり、近視の方向にピントがずれます。遠くが見えにくくなる一方で手元が見やすくなるため、「老眼が治った」と感じる方もいますが、水晶体の核が濁って屈折力が変わっただけで、目の機能が改善したわけではありません。

老眼鏡を使わなくても新聞が読めるようになったと喜んでいたら、実は白内障が進んでいた、というケースは少なくありません。眼鏡の度数が短期間で何度も変わるときは、核白内障を疑います。

後嚢下白内障:進行が速く視力低下が早いタイプ

水晶体の後ろ側(後嚢直下)が濁るタイプで、他の2つに比べて進行が速いのが特徴です。濁りが光の通り道の中心にあたるため、初期からかすみやまぶしさの自覚が強く、数ヶ月で視力が大きく下がることがあります。ステロイド薬を長期間使用している方や糖尿病のある方に多く、加齢だけが原因ではない点も皮質白内障や核白内障と異なります。

視力低下のスピードが速いため、見え方の変化を感じたら早めの受診が大切です。

白内障の症状と老眼の見え方はどう違うか

白内障の症状と老眼の見え方はどう違うか

50代前後で「見え方が変わった」と感じたとき、それが老眼の進行なのか白内障の始まりなのかは自分では判断しにくいものです。どちらも水晶体の変化が原因ですが、起きていることはまったく異なります。

老眼は水晶体の弾力が低下してピント調節がしにくくなる現象です。手元の文字がぼやけて見える一方、遠くの看板や信号は問題なく見えます。対して、白内障は水晶体が濁ることで光の通りが悪くなるため、近くも遠くも全体的にかすんで見えます。

「手元だけが見えにくい」のか「遠くも近くもぼんやりする」のかが、両者を見分けるひとつの目安です。

もうひとつわかりやすい違いは、まぶしさです。老眼では光のまぶしさが増すことはありませんが、白内障では水晶体内部の光の乱反射により、日常的にまぶしさを感じるようになります。以前は平気だった室内照明や対向車のライトがつらく感じるようであれば、老眼ではなく白内障のサインである可能性があります。

ただし、老眼と白内障は同時に進行していることも珍しくありません。「老眼だから仕方ない」と思い込んで放置すると、白内障の発見が遅れることがあります。見え方に変化を感じたら、眼科で水晶体の状態を直接確認してもらうのが確実です。

白内障の症状が出たらどのタイミングで受診すべきか

白内障の症状が出たらどのタイミングで受診すべきか

白内障は進行がゆっくりなことが多いため、「まだ大丈夫だろう」と先延ばしにしやすい病気です。受診を検討する目安は、見え方の変化が普段の生活に影響し始めたかどうかです。

具体的には、以下のような場面で不便を感じるようになったときが受診のタイミングです。

  • 運転中に対向車のライトがまぶしくて見えにくい
  • 新聞や本の文字がかすんで読みづらくなった
  • テレビの字幕がぼやけて見える
  • 夕方や曇りの日に段差がわかりにくくなった
  • 眼鏡の度数を合わせ直しても見え方がすっきりしない

見え方の不便さはなくても、定期的な検診で水晶体の濁りを早期に見つけておくことには価値があります。白内障は初期には自覚症状がほとんどないため、40代以降は年に1回の眼科検診で水晶体の状態を確認しておくと、進行の程度を把握できます。早期に見つかれば、点眼薬で進行を遅らせながら経過を観察するという選択肢が広がります。

おぎくぼ南口眼科では、視力検査に加えて眼底検査やOCT検査など、白内障以外の目の病気もあわせて確認できる検査体制を整えています。「かすんで見えるのは年齢のせいかもしれないけれど、念のため診てもらおう」という気持ちで十分です。

白内障の進行を遅らせるためにできること

白内障の進行を遅らせるためにできること

白内障で一度濁ってしまった水晶体を、元の透明な状態に戻す方法は現時点ではありません。そのため根本的な治療は手術になりますが、進行のスピードを遅らせることは可能です。

サングラスや帽子で紫外線を防ぐ

紫外線は水晶体のタンパク質に酸化ダメージを与え、濁りを促進する要因のひとつです。外出時にサングラスやUVカットレンズの眼鏡を使うこと、つばの広い帽子をかぶることで、目に届く紫外線の量を減らせます。紫外線量が多い5月から9月は特に意識しましょう。

糖尿病があれば血糖コントロールを続ける

糖尿病は白内障の進行を早める要因です。血糖値が高い状態が続くと水晶体内に糖の代謝産物が蓄積し、通常より若い年齢でも白内障が進みやすくなります。糖尿病のある方は、血糖コントロールを続けることが目の健康を守ることにもつながります。

点眼薬で進行を遅らせる

進行の初期に、ピレノキシンという点眼薬が使われることがあります。水晶体のタンパク質が変性して濁るのを抑えることで、進行を遅らせることを目的とした薬です。効果には個人差があり、使っていても進行することがあるため、点眼だけに頼らず定期的に経過を診てもらうことが大切です。

禁煙でリスク因子を減らす

喫煙も白内障のリスク因子のひとつです。タバコの煙に含まれる酸化物質が水晶体にダメージを与えるため、禁煙は目の健康を守るうえでも有効な対策になります。

白内障の症状に関するよくある質問

白内障の症状に関するよくある質問

白内障は何歳くらいから症状が出ますか?

白内障は加齢とともに誰にでも起こりうる変化で、年齢が上がるほど多くの方に見られます。日本眼科学会によると、60代で約70%、70代で90%の方に白内障が起こると言われています。ただし、水晶体に濁りがあることと、かすみやまぶしさを自覚することは別で、症状が出るかどうかは濁りの場所と程度によって異なります。

60代で初めて「かすむ」と感じる方もいれば、70代になっても不便を感じない方もいます。多くの方に白内障が見られても、全員がすぐに手術を必要とするわけではありません。

参考:白内障|日本眼科学会

白内障の点眼薬で症状は改善しますか?

点眼薬には、すでにできた濁りを取り除いて視力を回復させる働きはありません。今ある点眼薬は、白内障の進行をゆるやかにすることを目的としたものです。

「目薬で治る」と思って点眼を続けるうちに受診の時期を逃してしまうこともあるため、見えにくさが日常生活で気になり始めたら、手術も含めて一度眼科で相談してみてください。

片目だけ白内障が進むことはありますか?

あります。白内障の進行速度は左右の目で異なることがよくあります。片方の目の見え方が落ちても、もう片方が補ってしまうため気づきにくいのが特徴です。

片目ずつ交互にものを見て、左右差がないか確認する習慣をつけておくと変化に気づきやすくなります。

まとめ

まとめ

白内障の症状は、かすみ、まぶしさ、ものが二重に見える、色の変化など多岐にわたり、水晶体のどこが濁るかによって現れ方が異なります。特に核白内障では一時的に近くが見やすくなるため「老眼が治った」と誤解されやすく、気づかないうちに進行しているケースがあります。

見え方の変化に「年齢のせいだろう」と自己判断せず、眼科で水晶体の状態を確認してもらうことが、白内障の早期発見につながります。40代以降は症状の有無にかかわらず、年に1回の眼科検診を習慣にしておくと安心です。

おぎくぼ南口眼科では、視力検査、眼底検査、OCT検査をはじめとした検査で白内障をはじめとする目の病気を幅広くチェックできます。見え方に少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

監修者情報

おぎくぼ南口眼科 白内障手術執刀医 ビッセン宮島弘子(日本白内障学会評議員)

おぎくぼ南口眼科

白内障手術執刀医 ビッセン宮島弘子(日本白内障学会評議員)

白内障、屈折矯正手術分野では、国内のみならず国際的に高い評価を得ており、国際学会の手術ビデオコンテストでは、最優秀賞2回、部門賞12回、眼科で最も貢献した医師に贈られる賞をアメリカ、ドイツ、アジア太平洋の学会で受賞している。2006年国際眼内レンズ学会で女性初の会長就任、2010年より2018年まで日本白内障屈折矯正手術学会理事長、2018年よりアジア太平洋白内障屈折手術学会理事長を歴任。

経歴

  • 1981年 慶應義塾大学医学部卒業
  • 慶應義塾大学医学部眼科学教室入局
  • 1984年 ドイツ ボン大学眼科助手
  • 1987年 慶應義塾大学医学部眼科学教室助手
  • 1989年 国立埼玉病院眼科医長
  • 1995年 東京歯科大学市川総合病院眼科講師
  • 慶應義塾大学医学部眼科学教室非常勤講師
  • 2000年 東京歯科大学水道橋病院眼科助教授
  • 2003年 東京歯科大学水道橋病院眼科教授
  • 2022年 東京歯科大学水道橋病院眼科特任教授・名誉教授 現在に至る

資格・認定

  • 日本白内障学会 評議員
  • 日本老視学会 理事
  • 日本眼科学会 会員
  • 日本眼科医会 会員