眼の診察は全身疾患の診断にも役立ちます
眼は身体の窓ともいわれ、眼科の受診をきっかけに全身の疾患に気づくことがしばしばあります。
眼底は、生体で唯一細動脈・細静脈を観察できる部位であるため、眼底検査を通して、全身の血管の状態を推し計ることができます。したがって、眼の診察は、全身疾患の早期発見にとても重要な役割を果たしています。
眼の異常を感じて眼科を受診し、視神経や網膜の血管、角膜や水晶体の異常を検査することにより、思わぬ全身疾患が発見されるケースも少なくありません。
また、疾患の進行状態や重症度も、眼の所見から推察されるため、全身疾患の治療方法を検討する指針にもなります。
眼病変を起こす全身疾患には、高血圧や動脈硬化などの循環器疾患、糖尿病や甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患をはじめ、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群などの膠原病や類縁疾患、重症筋無力症などの筋疾患、ホルネル症候群などの神経疾患、ヘルペスなどの感染症、その他血液疾患や腫瘍など、主要なものだけでも数多くの疾患が挙げられます。
当眼科では、眼の症状のみにとらわれず、これらの全身疾患に特徴的な眼所見を見逃さないよう、丁寧な診察を心がけています。
高血圧
高血圧は血管内圧が高くなる循環器疾患ですが、高血圧が続くと、血管壁が高い圧に耐えるため、動脈硬化(血管壁が厚く硬くなる状態)を引き起こします。
高血圧が進行すると、この現象が全身の臓器で起こることで、さまざまな合併症を引き起こします。 眼底の血管は生理的状態で観察できるため、高血圧の動脈性変化は、眼底検査で評価することが可能です。
初期には、血管腔の狭小や動脈硬化性変化がわずかに見られる程度ですが、高血圧が進行すると、血管の口径不同や出血・白斑、視神経乳頭の浮腫性変化を認めるようになります。 交叉現象といって、硬い動脈によって静脈が圧迫され、静脈の血流が動脈との交叉部の両側で途絶したように見えることもあります。
同じ太さの動脈では、眼底の動脈と比べて脳の動脈ではより硬化所見が強い傾向にあるため、眼底の動脈を観察することによって、脳血管の状態を推測することができます。
糖尿病
糖尿病には、網膜疾患だけでなく、角膜障害、虹彩炎、白内障、外眼筋麻痺、血管新生緑内障などの眼合併症があります。
糖尿病網膜症(網膜症)は、失明の主な原因のひとつであり、糖尿病患者のquolity of life(QOL:生活の質)に密接に関わってくるため、その管理と治療はとても重要です。
高齢化が進み、また内科治療の進歩に伴う患者の長命化により、糖尿病網膜症の発症頻度は、年々増加しています。
網膜症の発症は、糖尿病の罹病期間と密接に関係しています。糖尿病未治療の場合、7年で50%以上が網膜症を発症し、20年で90%以上となります。 糖尿病は、放置すると確実に網膜症が発症し、進行してしまいます。
また、いったん進行した網膜症は、血糖コントロールが改善されても、増殖性変化を示すことで知られています。 糖尿病の眼合併症には、局所である眼の治療だけでなく、血糖をコントロールするという基本の治療を続けることが大切です。
そのため定期的に眼科を受診し、眼の状態から糖尿病の進行を推察しながら、進行度に合わせて血糖コントロールを行いましょう。
膠原病と類縁疾患
膠原病の多くは、網膜血管炎や強膜・角膜病変などの眼合併症を伴います。 なかでも涙腺と唾液腺に対する自己免疫性の炎症が特徴的なシェーグレン症候群では、激しい乾性角結膜炎が起こる場合があります。
ドライアイで当院を受診された方で、実はシェーグレン症候群だったという方も少なくありません。 このように、眼の症状から思わぬ全身疾患が発見されることもあれば、眼の症状から全身疾患の進行度を判断できることもあります。
気になる症状があれば、早めに当眼科にご相談ください。